ベトナムはなぜIT人材大国となったのか?その背景や得意とする技術分野を紹介

みなさんこんにちは。Wakka Inc.ラボマネージャーの中垣です。オフショア開発を検討している多くのIT企業が、委託先の候補地として真っ先に名前を挙げるのがベトナムです。 実際、オフショア開発.comの発表した「オフショア開発白書2021年版」によれば、オフショア開発を検討するIT企業の半数以上がベトナムへの開発委託を検討中であると回答しています。 東南アジアや南アジアにある多くの国のなかで、なぜベトナムのIT開発技術がこれほどまでに期待されているのでしょうか。今回は、ベトナムがアジア屈指のIT人材大国となった背景や得意な技術分野などについて紹介していきます。 Wakka Inc.では、ベトナムでの法人設立の支援をしています。ベトナム法人設立における基本STEPや人材採用の基本手法について知りたい方は「ベトナム法人設立マニュアル」をご覧ください。 目次 ベトナムにグローバル開発拠点設立を予定している方へ。日本のIT企業さまにご利用いただけるベトナムでの現地法人設立マニュアルです。 ベトナム法人設立における基本STEPや人材採用の基本手法について解説しています。ベトナムでの法人設立手法、スケジュール感を知りたい方はぜひダウンロードしてみてください。 ベトナムはなぜIT人材大国へと成長できたのか? 人材を育て産業の育成に貢献させるためには、何より教育政策が重要です。ベトナムでは1998年に初めて成立した教育法に基づき、小学3年生から英語教育およびコンピューター教育を実施しています。 また、政府主導で学校全体をデジタル化、IT機器を積極的に導入するとともに、特にSTEM科目(科学・技術・工学・数学)の強化に力を入れてきました。 なかでもソフトウェアに関しては、中学生からソフトウェアコーディングやIT科目の授業が始まり、年間5万人のIT技術者を輩出することに貢献しています。 この結果として2020年の時点でベトナム国内には40万人のIT技術者が存在しており、ICT関連の売上は1,123億5,000万USドル(2019年)にもなっています(Vietnam IT Market Report2020より)。 このような人材の輩出だけでなく、ベトナムはインフラの整備や外国企業の誘致も積極的に行っています。たとえば、JETROの「ベトナム 教育(EdTech)産業 調査」によれば、ベトナムのインターネットの利用率は70%(日本は83.4%)、スマートフォンの保有率は93%(日本は86.9%)で、スマートフォンの保有率は日本を上回っています。 これは、携帯電話(フィーチャーフォン)やパソコンの普及前にスマートフォンの普及が始まったためにこのような結果となっているのですが、93%という数値は成人のほぼ全員がスマートフォンを持っているということを示しています。 デバイスの普及を支えるのは、インフラの充実度です。つまりベトナムのインターネット普及率とインフラ整備の度合いは、先進国にまったく引けを取らないレベルに達しています。 そして、ベトナム政府は、外資系IT企業の誘致も積極的に行っています。外資系IT企業の誘致は、下請けなどによる国内IT産業育成のためだけでなく、国内にたくさんいるIT技術者の雇用を促進することにもなります。 そのためベトナム政府は、ハードウェアおよびソフトウェア分野でベトナムに進出する外資系IT企業に対し、4年間の免税期間と9年間の減税期間を提供しています。 このような国を挙げての教育政策、インフラ整備、企業誘致などが実を結び、ベトナムはIT人材大国へと成長したのです。 ベトナム人技術者・企業が得意なIT分野 それではベトナム人技術者はどのような技術が得意で、ベトナムにオフショア開発を委託する場合にはどのような分野が向いているのでしょうか。 ベトナムITマーケットレポート(Vietnam IT Market Report)を発表しているTOPDevの資料によれば、ベトナム人技術者が得意な言語は、以下のようになっています。 Javascript(5%)Java(1%)PHP(43%)Python(9%)C#/.Net(1%)Objective-C(5%)C++(2%)Ruby(8%) これらの言語は世界中のソフトウェア開発のニーズに合致しており、開発できる技術分野も以下のとおり幅広いものです。 バックエンド(5%)フルスタック(4%)フロントエンド(0%)アンドロイド(1%)iOS(1%) [出典:「VIETNAM IT NATION VIETNAM IT MARKET REPORT 2021」 TOPDev] ※バックエンド:ユーザーから見えないサーバーサイドの処理を指し、データベースやサーバー処理を担うプログラム、モジュールなど、仕組みや機能、部品をプログラミングする。 ※フルスタック:IT開発業務においてフロントエンドやバックエンドを含む、すべての工程を指す。このような開発をこなせる人材はフルスタックエンジニアと呼ばれ、幅広い知識と技術が求められる。 ※フロントエンド:Webサービスやアプリケーションで、ユーザーとのインターフェースになる部分。文字入力やボタンをクリックしたりするプログラミングを行う。 上記のように幅広いシステム開発に対応できるだけでなく、スマートフォンに関わる開発でも、アンドロイドやiOSに対応した技術者が揃っていることがわかります。 このようなことから、ベトナムにオフショア開発を委託する業種は、以下のような業種が多くなっています。 ソフトウェア開発Webシステム開発スマホアプリ開発HP制作ゲームアプリ開発イラスト、アニメーション外注、キャラデザイン制作データ入力 [出典:「オフショア開発白書2021年版」オフショア開発.com] 上記のような業種は開発費に占める人件費の割合が高く、日本国内ではコストダウンし難いのが現実です。 そのため、人件費で有利な東南アジアや南アジアに開発依頼することが多くなります。特にベトナムはこのような業種に対応できる技術力とコストのバランスに優れているので、委託先として最適です。 また、忘れてはいけないのが最新技術への対応です。現在ベトナムではAI(人工知能)やビッグデータ、ブロックチェーンなどの最新技術に対応できる技術者が増えており、日本では賄いきれない高度な技術者の充足も可能になっています。 もはやベトナムは、単にコスト削減のための委託先ではなくなってきているのです。 IT人材大国 ベトナムの今後 国を挙げてのさまざまな施策が実を結び、アジア屈指のIT人材大国となったベトナム。今後はどのように発展していくのでしょうか。 ベトナム政府は、今後も国のデジタル化、DX化を推進していくために、さまざまな施策を打ち出していくことを表明しています。 2020年、ベトナム政府は「2025年までの国家デジタルトランスフォーメーション(DX)プログラムおよび2030年までの方針」という計画を承認し、首相が政府議定「749/QD-TTg」に署名を行いました。 政府議定「749/QD-TTgとは、ベトナムが2030年までに高度なデジタル国家になるための数値目標を定めた公式文書です。 この文書のなかには、2030年までに「光ファイバーのカバー率100%」や「ICT開発指数(IDI)順位 世界30位以内(日本は2017年に10位、ベトナムは108位)」、「世界競争力指数(GCI)順位 世界30位以内(日本は2018年に5位、ベトナムは88位)」、「ブロードバンドカバー状況 全国で5G利用可」などの具体的な目標が定義されています。 従来からベトナム政府は、外資系IT企業やオフショア開発の誘致、IT人材の育成に力を入れてきましたが、今後はこのプログラムと合わせて、国のDX化や行政のデジタル化、IT化を強く推進していく計画なのです。 今後も成長が見込めるベトナムで「ラボ型開発」を活用する 上記のように今後も成長が見込めるベトナムIT市場ですが、Wakka.Incはベトナムにおけるオフショア開発やラボ型開発に豊富な実績を持っています。 ラボ型開発は基本的にメンバーを固定して開発を進めるため、開発のノウハウが蓄積されやすく、メンバー交代による非効率さもないのが特徴です。 開発メンバーの固定は日本国内で行うとコスト高となってしまう可能性が高く、開発効率は高いものの現実的には難しいとされています。 Wakka.Incは優秀なエンジニアが集うベトナム拠点を持っており、ラボ型開発を可能としています。 また現地の日本人スタッフが、ラボの運営からお客様の海外生活(出張・ビザ取得・海外法人設立)まで、トータルサポートするサービスも提供しています。 将来的にはラボの開発チームをそのまま移管することも可能です。さらに、スムーズな海外開発子会社の設立もお手伝いしています。 ベトナムにおけるオフショア開発・ラボ開発のメリットについて詳しく知りたい方は【ラボ型開発】おすすめはベトナム!その理由と具体的なメリットとは?をご覧ください。 まとめ:経験豊富な企業との連携がオフショア開発を成功させる ベトナムは政情的にも安定しており、安全とコスト、開発能力のバランスが取れたIT人材大国です。 ベトナムの多くの優れた人材をオフショア開発に活用すれば、日本よりコストパフォーマンスに優れたシステム開発が可能になります。 とはいえ、国民性や事情の異なる海外での開発には注意しなければいけない点もあります。オフショア開発を成功に導くには、多くの実績と経験を持つ専門企業との連携が成功のカギだと言えます。